坂本亜津佐さん(JAXA人事部)


― YACで宇宙を勉強している子どもたちにとって、JAXAは目標の職場のひとつです。JAXAがどんな若者を求めているのか、というのはとても気になるところでして。いきなりですが、ズバリ、今、JAXAが求めているのはどんな人ですか?

坂本: 私たち採用担当の間で、「3つの柱+α」と呼んでいる理想像があります。1つ目の柱は、とにかく「宇宙・航空が好きであることと、チームプレーができること」。宇宙や航空の仕事に必ず携われるというのがJAXAの強みなので、好きであることは絶対です。でもそれだけではなくて、周りの人達も一緒に巻き込めること、チームプレーができることがとても大切です。

2つ目は、「挑戦する力を持っていること」。JAXAの仕事はまだ誰も経験したことがない、未知の領域に挑戦することが多いです。なので、わからないことに向かって挑戦ができて、その壁を乗り越えて行ける人が理想ですね。たとえ失敗しても、その経験を次につなげていける強さも必要になります。YACの子どもたちは、宇宙に興味があるのはもちろん、分団活動などでチームワークの経験も豊富だと思うので、頼もしいですね。

最後の3つ目の柱は、自分はこれだけはがんばってきた!と胸を張って言える「自分のウリを持っている人」。そして、それを活かしてJAXAでどんなことがしてみたいか、がはっきりしていること。ウリは、直接宇宙や航空に関係することに限らず、何でもいいので。


― え! 「自分のウリ」は、宇宙や航空に関係ないことでもいいんですか!?

坂本: 関係なくていいんです(笑)。実際、JAXAの職員は、航空や宇宙関係を勉強してきた人よりも、それ以外のことをしてきた人のほうが多いですから。この前、同じ採用担当のスタッフと話していた時に、「ご飯に卵とじカツがドーンと乗っかっている”かつ丼”じゃなくて、いろんなおかずの小鉢が少しずつでもいっぱいある”OLのランチ”みたいな組織がいいよね」という話が出て(笑)。JAXA全体を見た時に、一つの分野を追求する専門家集団だけではなく、いろんな分野の専門家が少しづつ集まっていることも大切なんじゃないかな、と。YACの子どもたちも、好奇心の範囲を宇宙だけに狭めないで、自分が本当に興味があるものを見つけて、それを追求してもらうのがいいと思います。


― 坂本さん自身は、学生時代どんな勉強されていたんですか?

坂本: 私も、宇宙には直接関係ない「心理学」の勉強をしていました(笑)。もともと宇宙に興味はありましたが、心理学を学ぶのはとても楽しかったので、すっかり宇宙に興味があったことは忘れていましたが。ゼミの先生が、宇宙飛行士の心理テストをやっている先生だったことがきっかけで、心理学で宇宙とかかわることができるんだ、と。宇宙飛行士はもちろん、その宇宙飛行士を地上からサポートする人たちなどをが活躍している組織にはどんな人達がいるんだろう? と気になり出してJAXAに興味を持ったんです。


― 理系イメージの強い組織ですが、文系の方もかなり多いですよね。以前は、宇宙の専門家だけが入れる組織と思っていましたが、取材してみていろいろな勉強をしてきた人がいることに驚きました。間口はとても広いんですね。

坂本: そうなんですよ。自分のイメージだけで狭めている人が多いと思うんですけど、間口はすごく広いんです。採用担当の仕事をしていると「どんなことを勉強しておくといいですか?」とよく聞かれるんですが、いつも「何でもいいから、とにかく好奇心を失わずに打ち込めることを見つけてください」と答えています。JAXAだからといって、みんなが研究者なわけでもないですし、いろんな人の力を必要としているので。でもなにか一つ、と言われたら個人的には、語学力は身につけておいたほうがいいかなぁ、と思います。絶対必要、ということではないですがこれからは、様々な国の人と仕事をする機会が増えてくると思うので、それを逃してしまうのはもったいないですよね。とはいえ私自身も現在勉強中の身ですが。。。


― 「3つの柱+α」の「+α」は何ですか?

坂本: 「自分をドンドン成長させていこうとする意識のある人」です。JAXAに入ったことで目標達成では困ってしまうので。入った後もドンドン新しいことを吸収してくれる人がいいですね。社会人生活は、学生生活よりも全然長いですし、職員一人一人がすこしずつでも成長することで、JAXAという組織も成長していけると思うので。


― 「将来はJAXAで働いてみたい!」という子どもたちにも、これで具体的な道筋が見えてきたと思います。ありがとうございました。ちなみに、ちょっと話は横道にそれてしまいますけど、JAXAには”JAXA職員ならでは”という行事などあったりしますか? 宇宙機関という特殊な職場なので、何か変わった習慣とかあるのかな? と思いまして(笑)。

坂本: なんだろう~~??? JAXAの職員になったからといって、みんながロケットの打上げを見ることができるというわけでもないですし、、、。あ、でも、多くの企業では、就職が決まった学生(内定者)を会社に呼んで、次の4月から一緒にがんばろう、というお知らせをする会があるのですが、それが結構凝ってます。JAXAの場合、「内定者見学会」というのですが、種子島宇宙センターで開催しています。しかもその見学会の中で、一人ひとりに「内定通知書」というのを手渡すのですが、その場所はH-ⅡAロケット射点の目の前。ロケットを発射するあの大きな塔の真下で渡しています(笑)。さすがにそれは珍しんじゃないでしょうか・・・。。



坂本亜津佐
JAXA 人事部 人事課。JAXA採用担当者ブログも担当。



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