宇宙飛行士のお母様のインタビュー集が発売に!


向井千秋さん、若田光一さん、山崎直子さん、古川聡さんの4人の日本人宇宙飛行士を育てたお母さまに、教育ジャーナリストの杉山由美子さんがインタビューし、家庭でのしつけから教育まで、どのようにわが子を育て、関わってこられたのか、その極意をまとめた書籍『宇宙飛行士になった子供たち』が12月発売されます。

子どもたちの憧れの職業として、また人間のあるべき姿の理想像としても、私たちに多くの夢と希望を与えてくれる宇宙飛行士たち。文武両道で、人格的にも優れた彼らは、どのように育てられ、どのような子ども時代を送ってきたのでしょうか? そこには驚くべき共通点がありました。

現在子育て中の親御さんたちにとって、必ずや参考になるであろう、ホンモノの子育て論が満載!
そのお話のさわりの部分をほんの少しだけご紹介します!


向井千秋宇宙飛行士のお母様・内藤ミツさん

「べにや」はミツさんが結婚したとき開業した袋モノのお店。雇い人もいて、みんなで食事をする大家族。お店の上の3階が住まいでしたが、ひとの出入りも多く、いつもにぎやかでした。広い家ですが、個室や勉強部屋はありません。
「机がいるな」と思ったミツさんが与えたのが木のミカン箱。横にすると、座卓のようになります。そのミカン箱で、千秋さんは勉強や宿題をしていました。テレビを見たいときはテレビの方向にミカン箱を置いて、ながら勉強。ひとりになりたくなると、団ランから離れてミカン箱を片隅に置いて本を読んだり勉強したりしてました。

「かわいそうだったなと思いますが、文句を言われたことはありませんね」

中学2年まで個室はもちろん、自分の机もない千秋さんでした―――


若田光一宇宙飛行士のお母様・若田タカヨさん

タカヨさんと夫はこう話しあって子育てをしてきました。

「5歳までが一生の土台をつくるとき。わけがわからなくても、どんなこともきちんと道理を話して、いい悪いの判断ができるようにしなければいけない。体力をつけ精神的にも強い子に育てたい」

そう話してきました。
若田光一さんが生まれたのは1963年、埼玉県大宮市でした。2歳下に弟の瑞穂さんがいるふたりきょうだいです。
タカヨさんは育児日誌をつけていました。
かわいらしいしぐさ。
片言のきらめくような言葉。
ふとかいまみせた、魅力的な態度。

「これはいいな」

そう感じたことは、2,3行のメモにしておきました。

「忘れたらもったいない」

そのノートが、今回の取材でもおおいに役立ちました。手の間からこぼれるように消えてしまう子ども時代の小さなエピソードが、糸をたぐるようにするするといくつもいくつも出てくるのは、そのときのメモのおかげです。
そこには光一さんをいとおしんで育てたタカヨさんのあふれるような愛が記録されているのです―――


山崎直子宇宙飛行士のお母様・角野喜美江さん

松戸に生まれ、松戸で育った直子さんですが、幼稚園から小学生にかけて2年だけ、おとうさんの赴任で札幌で暮らしました。

「札幌は星空がとてもきれいだったのです。町内に『星を見る会』があって、宇宙に関心があった長男と直子を参加させました。天体望遠鏡で月のクレイターを見たり、土星の輪を観察したりして、とても感動していました。あれが直子の宇宙への関心のはじまりだったかもしれません」

テレビのアニメ番組もよく見ていました。

「『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』などはきょうだいで夢中になっていましたね。それで宇宙に関する絵本や図鑑など、見つけると買ってあげました」

とくに早期教育もしなかったそうですが、子どもの関心があったものはサポートして関心を広げ、伸ばすようにしてきたのです―――


古川聡宇宙飛行士のお母様・古川浩子さん

「NASAに行ったら、UFOがいるかどうかわかるかもしれないわね。じっさいどうなの。お母さんに教えて。あなたもそのためにNASAに行くんでしょ」

じつは浩子さんは、超常現象になみなみならない関心をもっていました。幻の大陸ムーのことや、宇宙人の残した謎の物体といった話を読んだりするのが大好き。
宇宙の神秘や、ネス湖の怪獣、そうしたことに関心をもっていたので、毎月、知るひとぞ知るの宇宙科学雑誌『UFOと宇宙』や『スーパーミステリーマガジン ムー』を購入していました。
読むのは浩子さんと長男の聡さん。3歳離れた次男と、さらに3歳離れた長女は見向きもしなかったそうです。
聡さんは「生け捕りにされ、両側から人間にはさまれている宇宙人」という記事と写真にたいへん興味をひかれたそうです。
「宇宙人はほんとうにいるんだろうか」。母と息子がひそかに育んできた、宇宙への憧れと神秘と謎への好奇心でした―――

 


『宇宙飛行士になった子どもたち』 杉山由美子著、日本宇宙少年団 企画、発行:岩崎書店、定価1, 365円(税込)、四六判192頁。

杉山由美子
教育ジャーナリスト。静岡県生まれ。早稲田大学文学部卒業。主に教育問題や働く女性をテーマに取材・執筆。著書に『子どもの気持ちがわからないときに読む本』(岩崎書店)、『偏差値だけに頼らない私立中学選び』『SAPIXメソッド』『間違いだらけの塾選び』(すべてWAVE出版)、『数学オリンピック選手を育てた母親たち』(小学館)、『ひとりっ子時代の子育て』(NHK出版)など多数。




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